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シェリングの全集と、書簡集について (v. 3.3.9.) |
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はじめに (1.0.) ・ドイツ語のシェリング全集の種類 (1.8.3.) ・邦訳のシェリング著作集 (1.3.) ・ドイツ語のシェリング書簡集の種類 (1.2.) ・邦訳のシェリング書簡集 (1.1.) |
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はじめに 現在、シェリングに関する論文で言及される彼の全集は、ドイツ語で 3 種類、邦訳の著作集で 1 種類あります。新しい順に簡単にまとめてみました。 ドイツ語のシェリング全集の種類 ● Friedrich Wilhelm Joseph Schelling. Historisch-Kritische Ausgabe 『アカデミー版』、または『批判版』あるいは『歴史的批判版』 1975 年から、バイエルン・アカデミー Bayerische Akademie der Wissenschaften の委託によって、シェリング委員会が刊行しています。書簡も含み、要するに決定版です。 ただし高価なのと、入手しづらいのが難点。 なお、「歴史的(historisch)」というのは、「当時の表記の固有性を保ったままで」という意味です。また、「批判的(kritisch)」は、「新たに [文献学的な] 批判検討を加えた」ということでしょう。 ● F. W. J. Schelling Ausgewählte Schriften 『ズーアカンプ(ズールカンプとも)版選集』 1985年にズーアカンプ社 Suhrkamp Verlag から出版された、年代順の選集です。ポケット版ですので、経済的で軽量なのがうれしいところです。ただし、 1) 主要な著作で欠けていたり、部分的な収録にとどまっているものとして: 1801 年『私の哲学体系の叙述』(部分) 1802 年『ブルーノ』(欠) 1802 年『哲学体系からのさらなる叙述』(部分) 1803 年『大学での研究方法についての講義』(部分) 1806 年『改良されたフィヒテの説と、自然哲学との真実な関係の説明』(部分) 1809 年 『人間の自由の本質について』(欠) 1836 年『哲学的経験論の叙述』(欠) 2) ドイツ文字で印刷されているので、不慣れな人は、ローマ字との対応表を自分で用意する必要があります。(『詳解ドイツ大文法』(橋本文夫著、三修社)の 660 ページ、『改訂 ドイツ広文典』(桜井和市著、第三書房)の 1, 2 ページに載っています。なおこの2つの文法書は、ドイツ古典文献を読む人には必携のようです。どちらか1冊をというのであれば、古本にはなりますが前者を推します)。 3) シェリングとフィヒテやヘーゲルの関係を調べたいのであれば、この選集だけでは役不足です。 なお、各ページの上部内側には、下記『オリジナル版(SW 版)全集』でのページ付けが付記されているので、論文などで引用個所を示すときには、それをお勧めします(例: I/4, 385 → 『オリジナル版全集』第 I 部、第 4 巻、385 ページ)。 この点については、各巻の冒頭近くの Bibliographische Notiz で、その始めのほうにおいて、説明されています。 ● Schellings Werke 『シュレーター版』あるいは『ミュンヘン記念版全集』 副題に説明として、「オリジナル版全集に基づいた、シュレーター Manfred Schröter による新配置での出版」とあります。オリジナル版からもれなく写真製版され、1927 年より刊行され、本巻(Hauptbände) 6 冊・補巻(Ergänzungsbände) 6 冊です。 この新配置により、本巻では「すべての重要な著作が、厳密に年代順に配置され、かつ同時に」、内容別に各巻に分けられているとのことです。(本巻の第 1 巻、VIII ページ) 補巻では、各巻は内容別に構成されています。補巻の第 5 巻には、1842 年の「神話の哲学」が、第 6 巻には、1854 年の「啓示の哲学」が当てられています。 全巻の目次は、本巻の第 1 巻、XIV ~ XVII ページに掲載されており、該当するオリジナル版全集の巻とページ数も記載されています。 各ページの内側にも、該当するオリジナル版全集の巻とページ数が、( )に入れられて記載されています。この『シュレーター版』自体のページ数は、各ページの外側に記されています。(両版における巻数は、一致したりしなかったりします。) 活字はドイツ文字で、C. H. Beck 社の現行本ではつぶれているところもありますが、さすがに判読不可能ではありません。いずれにしろ、よく使われている版ではあります。 なお注意すべきは―― (1) インクのにじみと欠損で、n の字が u のように見える場合があります。 (2) c が e に誤植になっている箇所が、ところどころにあります。 (3) 誤植ないしは誤っていると思われる箇所は: ★ 本巻の第1冊 ・51ページ、25行目の schechthin は、schlechthin の誤植でしょう。 ・311ページ、25行目の firiren については、fixiren [= fixieren] の誤植か、最初の r は x の下側が消失したものかでしょう。 ・321ページ、20行目の aufzugeben? の ? は、プンクト(.)の誤植でしょう。参照。 ・332ページ、脚注1の3行目の auf は、aus の誤植でしょう。 ★ 本巻の第2冊 ・729ページ、6行目の welchen は、welches の誤植です。 ● F. W. J. von Schelling, Sämtliche Werke 『オリジナル版全集』あるいは『原版全集』または『SW 版』 シェリングの息子 K. F. A. Schelling が編集し、1856/61 年に出版しました。第 I 部の 1~10 巻と、第 II 部の 1~4 巻の全 14 巻。 配列は年代順で、第 II 部には遺稿となった講義草稿の「神話の哲学」「啓示の哲学」「積極哲学」などが含まれます。 「版を重ねたテキストの場合には最後の版を、その他は父が発表すべくあらかじめ定めておいた版を採録」しているそうです。(大橋良介氏) 邦訳のシェリング著作集 ● 『シェリング著作集』 ★ 燈影舎によるこの著作集の出版は、完成をみることなく中止になりましたが、文屋秋栄(ふみやしゅうえい)社により、「装い新たに発行」されだしました。 「既刊巻へは改訂を加え、未刊巻を新刊として」、とのことです。 内容は以下のとおりです。なお、イタリック太字のものは、既刊です(2020年6月6日現在)。 1a. 自我の哲学 1b. 自然哲学 2. 超越論的観念論の体系 3. 同一哲学と芸術哲学 4a. 自由の哲学 諸世界時代 第一巻 過去(第一草稿 1811年) 諸世界時代 第一巻 過去(第二草稿 1813年) 4b. 歴史の哲学 5a. 神話の哲学 6a. 啓示の哲学(上) ドイツ語のシェリングの書簡集の種類 ● 上記『アカデミー版全集』(Friedrich Wilhelm Joseph Schelling. Historisch-kritische Ausgabe)の第 III シリーズ(表記は Band III)が、書簡集(III: Briefe)にあてられており、往復書簡集が収録されています。 しかし、2013 年 8 月現在、下記の 2 冊しか出版されてないようです: Band III, 1: 1786 - 1799 Band III, 2: 1800 - 1802 とくに手紙などの読解では、綿密な校訂や、書かれている状況の情報(後からの挿入とか、オリジナルの有無など)が欲しいものです。また、編集者の注も理解を深めるために、大いに役立ちます。そこで、この『アカデミー版全集』が必要となります。 誤植だと思われるのは: Band III, 1: S. 23, Z. 4. ( [括弧の左側] → 削除 Band III, 1: S. 23, Z. 15. mehrerers → mehreres ● F. W. J. Schelling. Briefe und Dokumente 『F. W. J. シェリングの書簡と文書』 フールマンス(Horst Fuhrmans)が編纂(へんさん)し、少なくとも第 3 巻までは出版されています。利用しづらい構成になっているようです。 Band I: 1785 (?) 年の詩から、1809-10-2 までの主要な手紙が収録されています。(1962 年刊) Band II: 1790-5-2 の詩から、1803-5-20 の手紙までが収録されています。なお、本文目次には欠落があり、正誤表(といか、冊子)が付属しています。(1973 年刊) Band III: 1803-5-30 から、1809-9-10 までの手紙中心の構成になっています。『ドイツ観念論についての、最初期の体系計画(Das älteste Systemprogramm des Deutschen Idealismus, いわゆる「ドイツ観念論最古の体系プログラム(計画)」』(1796 - 97 年頃)が収録されています。なお、巻末付録類を記した目次はありません。(1975 年刊) ● Aus Schellings Leben. In Briefen. 『書簡集におけるシェリングの人生』 G. プリット(Plitt)が 1869/1870 年に全 3 巻で出版したもの。文献学的には、信頼できないと言われます。 ● Fichte-Schelling Briefwechsel 『フィヒテ-シェリング往復書簡』 ワルター・シュルツ(Walter Schulz)の序文を付けて、1968年に Suhrkamp Verlag より出版。 ● Fichtes und Schellings Briefwechsel 『フィヒテとシェリングの往復書簡集』 両哲学者のそれぞれの子息が、共同で1856年に出版したもの。しかし、文献学的には信頼できないと言われます。 邦訳のシェリング書簡集 ● 『フィヒテとシェリングの、哲学的往復書簡集』(拙訳) 2人の往復書簡のうちの、哲学的議論の部分だけを、訳出しています。1856 年版の Fichtes und Schellings Briefwechsel を底本としましたが、J. G. Fichte-Gesamtausgabe, III, Band 4, 5 (『アカデミー版フィヒテ全集 III,4-5』)でチェックしました。 ● 『フィヒテ-シェリング往復書簡』(座小田・後藤訳、法政大学出版局、1990年) 上記のワルター・シュルツが 1968 年に出版した Fichte-Schelling Briefwechsel を、翻訳したもので、全訳です。(なお、この訳書で誤訳と思われる箇所については、こちらを参照してください)。 |
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