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1801/1802 年のヘーゲルの講義断片の翻訳
 絶対的な本質の理念 v. 1.2
[より抜粋]

DIE IDEE DES ABSOLUTEN WESENS . . .


  目 次

 はじめに
I. テキストについて
II. 凡例
翻訳


  はじめに

  ヘーゲルは、1801 年にはすでに体系構想を持っていました。特徴としては、彼の哲学(=学問)においては:
・最初の論理学から最後の宗教・芸術までが、一つながりに展開していること。
・第1部の観念論「すなわち論理学」(訳者注1)がフィヒテ・シェリングの超越論的観念論の、第2部がシェリングの自然哲学のヘーゲル版だとすれば、第3部で精神哲学を、第4部で宗教・芸術哲学を独自に増設した構造になっていることです。
 なお、シェリングの体系構成(1803年)については、「序文への付記」を参照して下さい。


I. テキストについて

 アカデミー版のヘーゲル全集(Gesammelte Werke)、第 5 巻 263-264 ページが適切です。


II. 凡 例

 [  ] 内の挿入は、訳者によるものです。


                      ・・・[冒頭部を省略]・・・

         内容の概略

 さてまず最初に、哲学自体の単純な理念を認識し、そして哲学における区分を導出する。この理念そのもの広闊な学問は、観念論すなわち論理学である。この論理学が同時に含んでいるのは、理念が自らのうちに包含するところの形式的諸規定が、自らを絶対的な諸規定へと構成するべく努めるということである。すなわち論理学は、理念そのものの学問としては形而上学なのであって、制限付きの哲学体系であるような似非(えせ)形而上学を否定する。
 そして学問は、実在的理念の学へと移行し、まず理念の実在的身体(
Leib)を記述する。この身体としては最初に天体の体系を、学問は認識する。その後、学問は地上に降り下って、有機体の概念の理念的な諸契機を、つまりは地上において措定されているような力学を、そしてまた化学を把握する。この後、学問は有機体へと、また固体へと下る(訳者注2)
 有機体自体の理念は、地上の鉱物の体系において、また植物と動物の体系において実現される。そしてここから、自然から、理念は精神として立ちのぼり、絶対的な倫理として自らを形成する。そして、自然哲学は精神哲学へと移行するのである。
 理念はその観念的契機や、表象、欲望を――これらは、自然における力学や化学に対応するのであるが――自らのうちで総括し、そしてまた欲求と法律(
Recht)の領域を自らに従わせつつ、自らは自由な民族(Volk)として実在するであろう。そしてこれは最後に、第 4 部の宗教・芸術の哲学において純粋な理念へと立ち帰り、神の直観を形成するのである。・・・
  
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訳者注1) 本訳文中での「観念論すなわち論理学」の「観念論」は、超越論的観念論を意味しています。このことは、ヘーゲルの1803/1804 年冬学期講義の告示に、「論理学と形而上学、すなわち超越論的観念論(Logicam et Metaphysicam, sive Idealismum transscendentalem)」とあることからも分かります。

訳者注2) 原文は:

 alsdenn wird sie [die Wissenschaft] auf die Erde herabsteigen, zum Organischen oder zur Individualität . . .

 zum
以下と zur 以下の語句が、どの動詞に続いているのかが問題です。拙訳では、一応直前の herabsteigen にとっています。しかし、wird だとも考えられます。この場合の訳は、「有機体にまた固体になる」となります。

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(初出: 2011/3/1)
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