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6.『新・血液型人間学』(1978年)から

(1) 司会者の血液型分布(44−46ページ)

 TV司会者の血液型分布は、『血液型活用学』(1976年)の 103-104ページで紹介されていたが、データを補強されて再登場となった。
 「司会者の選別には異論もあろうが、テレビのプロデューサーや芸能記者の助言も受け、一定期間、TV番組で安定した司会役を続けた人をとりあげている」とのことである。
 44ページに、調査数 96人と各血液型のパーセント数、危険率 p値が掲載されているので、それから実際の人数と期待値を計算して、付け加えたものが下の表である。

<TV一流司会者の血液型分布(1977年)>

血液型

日本人平均分布率

司会者数(%)

司会者数(人)

期待値(人)

O型

29 %

18.8 %

18

28

A型

39 %

31.3 %

30

37

B型

22 %

35.4 %

34

21

AB型

10 %

14.6 %

14

10

合計

100 %

100.1 %

96

96

p<0.1%

●能見氏の考察
 「O型は一言で言えば、常に演技者(プレーヤー)であろうとする。たとえ、現在が司会、解説、評論、あるいは観客の立場であっても、そのプレーヤー志向の強さは消えない。それが……時に自分のプレーは抑えねばならぬ司会役に数が薄くなる第一の原因であろう」。
 「A型の抑制タイプは、司会というよりも、インタビューにすぐれる」。
 「B型の型にはまらなぬ即興性(アドリブ)が、賑やかなステージでの司会役に、ことに生かされよう」。
 「AB型は……人と人とのパイプ役や、相手に合せることの巧みさが、司会にも進出させる多芸さとなるのであろう」。
★実際の司会者数と、血液型の平均分布率から算出した期待値(人)で、カイ2乗検定結果をすると、危険率 0.2%で血液型による有意差がある。(能見氏の用いている平均分布率では、0.09%)。
 O型司会者の少なさを、二項分布によって調べると、18人以下となる危険率は 1.5%で、有意差がある。
 A型司会者の少なさを、二項分布によって調べると、30人以下となる危険率は 7.2%で、有意差はない。(有意水準 10%で、両側検定、片側5%ずつ。A型の日本人平均分布率を 38.1%としても、 10.0%となリ、有意差はない)。
 B型多さを、二項分布を用いて調べると、34人以上となる危険率は 0.2%と、たいへん小さい。
 AB型の司会者の多さを、二項分布を用いて調べてみると、司会者が 14人以上となる危険率は 9.7%で、有意差はない。(有意水準 10%で、両側検定、片側5%ずつ。AB型の日本人平均分布率を 9.4%としても、 6.5%となリ、有意差はない)。したがって、AB型の司会者が多いことと血液型気質との関係は、この調査からはいえない。


(2) 加害自動車事故と血液型分布(266-275ページ)

 「本書旧版〔『血液型人間学』〕でも、交通事故と血液型問題に注意を喚起したが、その効果あってか、最近少しずつ、この方面の調査を考える向きが増えてきた」。
 「ことに19787月に報告がまとめられたAIU保険会社による事故調査は、規模の大きさからいっても、最初の本格的調査といえるだろう。これは同社の自動車保険加入者のうち、加害事故を起こしたことのある約二千人に、アンケート用紙を送付し、1374人の有効回答を得て、血液型別に分析したものである」。


(i) 全体的な傾向について

 「回答者のうち、O型は 35.6%、A型 34.3%、B型 19.6%、AB型 10.5%となっている」。

●能見氏の考察
 「日本人平均とくらべると、O型が目立って多く、A型がかなり減少を見ている。B型、AB型は、これといった増減とはいえない。この偏りは、カイ自乗検定計算でも、危険率はゼロに近くなり、文句のない有意性を示している。ただ、ドライバーの血液型分布が、日本人全体のそれと一致するかどうか、現在の車の普及度から見れば問題はないと思うが、考慮の余地はないとは言えない」。
★「ドライバーの血液型分布」の偏りは、おそらく心配ないであろうが、アンケート回答者全体の血液型分布の偏りが、むしろ気にかかるところである。しかし、血液型は、AIUへの保険加入やこの種のアンケート回答への行動には影響しない(例えば、O型はアンケート回答率が高いなど)、という前提で分析してみよう。
 調査回答者の各血液型人数と、その期待値を計算すると、下の表のようになる。
 なお、能見氏は回答者(1374人)を、「調査対象者」と記しているが、「(調査)回答者」と拙稿ではよぶことにする。「調査対象者」は、アンケート用紙を送付した約二千人を指すものとする。

O型

A型

B型

AB型

合計(%)

調査回答者
血液型構成(%)

35.6 %

34.3 %

19.6 %

10.5 %

100 %

調査回答者
血液型構成(人)

489

471

269

144

1374

日本人平均
分布率
(%)

29 %

39 %

22 %

10 %

100 %

期待値(人)

398.5

535.9

302.3

137.4

1374.0

 調査回答者の血液型人数と、その期待値でカイ2乗検定を行なうと、危険率は 0.00004%で、氏の指摘どおり、「文句のない有意性を示している」。

●能見氏の考察
 「A型の加害事故の少なさは、首肯できる。A型は一般に機械類などメカニズムに強い人が多く、生来の緻密さ、周囲にレーダーを張りめぐらせた感じの注意力などで、他の血液型にたちまさっている。加えて行動の慎重さが、安全運転につながる」。
A型少なさを、二項分布を用いて調べたいが、数字が大きすぎて「EXCEL97」ではエラーになってしまう。そこで、正規分布で代用する。
 正規分布N(np, np(1-p))に代入すると、

N(1374 x 0.39, 1374 x 0.39 x (1−0.39))
=N(535.9, 18.1の2乗)

 計算すると、471.5人以下の 危険率は、0.02%になる。(A型の日本人平均を、39%とした場合。38.1%とすれば、0.2%)。能見氏の言われたように、A型の立派さが現れている。(しかし、O型の私は思うのです――たった一割程度、事故が少ないだけですね)

●能見氏の考察
 「O型の多さが、むしろ以外であった。私は危険回避能力では、O型がズバぬけて高いと見ているのである。……この意外さは、しかし、調査結果を、事故様態別ならびに運転キャリア別に眺めるうちに消えた」。
★O型の多さも正規分布で代用して、調べることにする。
 正規分布N(np, np(1-p))に代入すると、

N(1374 x 0.29, 1374 x 0.29 x (1−0.29))
=N(398.5, 17.0の2乗)

 計算すると、488.5人以上の 危険率は、なんと 0.000006%になる。(O型の日本人平均を、29%とした場合。30.7%とすれば、0.005%。)やはり、O型は事故が多いのである。(といっても、2割増しただけなんですが)。


(ii) 事故の種類別の傾向について

 次に、「……事故を種類別に分けた血液型の分布率」が示される。

O型(%)

A型(%)

B型(%)

AB型(%)

合計

調査数(人)

追突事故

31.9 %

28.7 %

20.2 %

19.2 %

100 %

282

交差点における出合頭事故

42.5 %

26.0 %

26.0 %

5.5 %

100 %

219

交差点における右折車と直進車の事故

44.5 %

29.6 %

14.8 %

11.1 %

100 %

81

センターラインオーバーによる事故

41.7 %

29.2 %

16.6 %

12.5 %

100 %

72

車線変更による事故

33.3 %

38.1 %

14.3 %

14.3 %

100 %

63

歩行者に対する人身事故

58.3 %

29.2 %

8.3 %

4.2 %

100 %

72

単独事故

32.5 %

42.1 %

19.3 %

6.1 %

100 %

342

その他の加害事故

27.2 %

40.7 %

21.0 %

11.1 %

100 %

243

調査回答者の血液型構成

35.6 %

34.3 %

19.6 %

10.5 %

100 %

1374

(項目の並べ方は変更している)。

●能見氏の考察
 「最も注意をひくのが、六番目の“歩行者に対する人身事故”におけるO型の著しい多さである。72人の資料数だが、カイ自乗検定の危険率も、0.1%以下である」。
 「私の解釈はこうである。O型の生命に対する自己防衛本能は、極限状況においては、他人を避けようとする以前に、自分を守ろうとする行動が一瞬優先し、それが裏目に出て、歩行者を回避する処置が、おくれることがあるのではないか? もちろん、瞬間、無意識の行動であり、これがO型のヒューマニスティックな傾向とは無関係である。……O型ドライバーは、ことにその初心者段階において、人身事故に対する教育をより工夫することは、決して行き過ぎとは言えないだろう」。
★O型だけの検定をするのに、なぜ「カイ自乗検定」を行なうのか、また、どのように行なったのか、理解できない。O型とその他に大別したのであろうか。やはり、ここでは普通の手順をふもう。
 まず、「歩行者に対する人身事故」の人数を計算すると、下の表になる。

O型(人)

A型(人)

B型(人)

AB型(人)

合計(人)

歩行者に対する
人身事故(人)

42

21

6

3

72

 O型の多さを、二項分布によって調べると、42人以上となる危険率は 0.00002%で、有意差を示す。(O型の日本人平均を、29%とした合。30.7%とすれば、0.0001%)。
  無力な歩行者を傷つけるときに、O型ドライバーは「極限状況においては、他人を避けようとする以前に、自分を守ろうとする行動が一瞬優先」する、と言うのは、いささか好意的すぎよう。「無意識の行動」において、O型は自分より弱い勢力に対して横柄というか、あるいは、強い勢力(例えば、大型トラック)が見当らないところでは、回りを気にしない面があるようである(O型の筆者みずから、ふり返って思うのですが)。計算ぬきで、そのような態度になるため、そこがまた可愛いというか――えっ、そんなことはない?

●能見氏の考察
 「O型は交差点での事故も著しく多い。この面でも充分の有意差が出ている。O型の直進的な行動性が、交差点では弱さを見せるとするのは、こじつけすぎるであろうか?」
★「交差点における出合頭事故」と「交差点における右折車と直進車の事故の人数を計算し、合計して、それを「交差点での事故」すると下の表になる。

O型(人)

A型(人)

B型(人)

AB型(人)

合計(人)

交差点における出合頭事故

93

57

57

12

219

交差点における
右折車と直進車の事故

36

24

12

9

81

交差点での事故

129

81

69

21

300

 O型の多さを、二項分布によって調べると、129人以上となる危険率は 0.00002%で、有意差を示す。(O型の日本人平均を、29%とした場合。30.7%とすれば、0.0003%)。
 危険率が驚異的に小さく、このデータが適切にまとめられたものだとすれば、O型は要注意だということになる。筆者自身、車体の横をこする自損事故の連続に泣かされてきたが、氏のO型は「直進的な行動性」であるとの説明を読んで、はじめて「納得」したのだった。

●能見氏の考察
 「この人身事故と交差点事故を除くと、たとえば表の単独事故、およびその他の事故の合計では、つまり一般的状況での事故では、……O型は……むしろ事故の少ない部類に入るのだ」。
★以上のように、氏はO型を慰めて下さるのだが、事態は如何?
 「単独事故」は、O型が 32.5%をしめており、相対的にはむしろ多めである。残された最後の希望、「その他の加害事故」27.2%はどうであろうか。
 「その他の加害事故」の人数を計算すると、下の表になる。

O型(人)

A型(人)

B型(人)

AB型(人)

合計(人)

その他の加害事故

66

99

51

27

243

 O型の少なさを、二項分布によって調べると、66人以下となる危険率は 29%で、有意差はない。(O型の日本人平均を、29%とした場合。 30.7%としても、 13%となリ、有意差はない)。

●能見氏の考察
 B型は「交差点の出会い頭事故がかなりに多い」。
★「交差点における出合頭事故」の人数を計算した上の表をみると、B型は 219人中、57人をしめている。
 B型の多さを、二項分布を用いて調べると、57人以上となる危険率は 8.9%であリ、有意差はない。(B型の日本人平均を、22%とした場合。21.8%とすれば、7.8%。有意水準 10%で、両側検定、片側5%ずつ)。B型については、このデータからはなんとも言えない。

●能見氏の考察
 「B型の目移りに対し、AB型には"頭移り"と言いたい面がある。なにか他のことに考えを奪われるのだ。……〔追突事故については〕頭移りのために、先行車の瞬間的な速度変化に、ついていけないこともあるのではないだろうか。
 「しかしAB型ドライバーにとって、何よりも怖いのは、睡眠不足であろう。極めて多くのAB型ドライバーから耳にすることだが、睡眠不足の場合、居眠りとまではいかなくても、ほんの一、二秒意識が空白になることが間々あるという。……
 「大手教習所の指導員六、七十人を対象に、アンケートを試みたこともあったが、睡眠不足を懸念するAB型が、他の血液型の二倍以上存在する。……
 「睡眠不足に極端に弱さを持つAB型としては、用心に越したことはないであろう」。
★O型の筆者には、信じがたいようなことであるが、まず、実際の人数を算出してみよう。

O型(人)

A型(人)

B型(人)

AB型(人)

合計(人)

追突事故

90

81

57

54

282

  AB型の多さを、二項分布を用いて調べると、54人以上となる危険率は 0.0003%であリ、有意差はハッキリとしている。(AB型の日本人平均を、10%とした場合。9.4%とすれば、0.00004%)。


(iii) 事故の運転歴別の傾向について

 「A型について瞠目される数字は、運転キャリア別の加害事故件数に表れた」。そして、下の表が示される。

<加害事故者の運転歴別の血液型分布

(未確認 15人を除く)

O型

A型

B型

AB型

回答数(人)

1年未満

23.1 %

50.0 %

11.5 %

15.4 %

78

1年以上 5年未満

39.5 %

33.3 %

18.6 %

8.5 %

387

5年以上 10年未満

42.9 %

33.9 %

14.3 %

8.9 %

336

10年以上 15年未満

29.2 %

30.3 %

28.1 %

12.4 %

267

15年以上

32.0 %

35.1 %

21.6 %

11.3 %

291

回答者の血液型構成

35.6 %

34.3 %

19.6 %

10.5 %

合計 1359人

正しい血液型構成

35.8 %

34.2 %

19.6 %

10.4 %

(未確認者が 15人いるので、合計は 1359人と、種類別の加害交通事故合計 1374人より減少している。しかし、回答者の血液型構成のパーセント数字が、まったく変わっていないのは誤っており、正しい数字を算出して、一番下に付加した。
 また、項目の並べ方は変更している)。

●能見氏の考察
 「一年未満のキャリアのドライバーにおいて、A型は 50%という驚くべき高率を示している。対してO型が甚だ低い」。
 「多くのA型ドライバーに質問も重ね、一つの解釈を得ている。A型は日頃、対人的に自己抑制の緊張の過剰な人が多い。それだけ、一人車の中でハンドルを握り、外界から一応遮断されると、大きな解放感を味わうらしい。それがスピードに出る。A型は本質的にスピード愛好の傾向がある。……それが一度、事故を起すとこりて、これをA型流である安全運転に移行するのが、A型ドライバーの標準コースのようである」。
★パーセントで表されている上の表を、人数に変えると下の表になる。

O型(人)

A型(人)

B型(人)

AB型(人)

合計(人)

1年未満

18

39

9

12

78

1年以上 5年未満

153

129

72

33

387

5年以上 10年未満

144

114

48

30

336

10年以上 15年未満

78

81

75

33

267

15年以上

93

102

63

33

291

回答者の血液型構成

486

465

267

141

1359

  A型の一年未満の事故者の多さを、二項分布を用いて調べると、39人以上となる危険率は 3.1%である。(A型の日本人平均を、39%とした場合。38.1%とすれば、2.1%)。A型についての能見氏の考察は、もっともと思われる。
 O型は、一年未満の事故率のパーセント数字(23.1%)をみれば、日本人平均分布率(29%)よりかなり少ないが、二項分布を用いて調べると、18人以下となる危険率は 15%で、有意差はない。(O型の日本人平均を 30.7%としても、8.8%となり、有意差はない。有意水準 10%で、両側検定、片側5%ずつ)。したがって、O型については、まだはっきりとしたことは言えない。

●能見氏の考察
 「この七十八人については、カイ自乗検定の危険率は 0.5%以下。有意差は充分である」。
★この危険率の計算は、各血液型の「一年未満の事故率」と「日本人平均分布率」を、パーセント数字のまま用いてカイ2乗検定したようである。その場合、0.25%という数字が出るが、これには何の意味もない。(「日本人平均分布率」の代わりに、「回答者の血液型構成のパーセント数字」を使ったのであれば、0.06%になるが、これにも意味はない)。
 カイ2乗検定をするのであれば、「実測値」には実際の人数の 18, 39, 9, 12を、「期待値」には、「1年未満の合計 78(人) x 日本人平均分布率」を使わねばならない。期待値の計算結果を表にすると――

O型(人)

A型(人)

B型(人)

AB型(人)

1年未満の実測値

18

39

9

12

1年未満の期待値

22.6

30.4

17.2

7.8

日本人平均分布率

29 %

39 %

22 %

10 %

 カイ2乗検定をすると、危険率 2.3%で有意となる。(日本人平均分布率に、能見氏の使用している日本人平均分布率を用いると、危険率 1.1%となる)。
 結果は、氏の言われるように「有意差は充分である」。

●能見氏の考察
 「AとABは、初心で事故率がハネあがる」
★A型については、有意差があることをすでにみたので、AB型の一年未満の事故者の多さを、二項分布を用いて調べてみる。12人以上となる危険率は 8.7%で、有意差はない。(AB型の日本人平均を、10%とした場合。日本人平均を 9.4%とすれば、6.0%となり、やはり有意差はない。有意水準 10%で、両側検定、片側5%ずつ)。AB型については、より多くのデータの収集が必要であろう。


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