5.『血液型エッセンス』(1977年)から
衆議院議員と都道府県知事の血液型分布(15−19ページ)
「政治の世界に、まず、統計的現象を求めてみよう。
「政治は、好きな人も嫌いな人もいる。だが、それが古くから、人間の基本的活動の一つであることを、認めない人はあるまい。恐らく、数百万年前の曙原人(オーストラロ・ピテクス)の昔から、すでに政治行為は、存在していたに違いない」。
そして、以下の表が示される。
<全衆議院議員の血液型分布>
(1976年末の総選挙直前、不明者を除く)
血液型
|
日本人平均分布率(%)
|
議院数(%)
|
〔%での〕倍率
|
議院数(人)
|
期待値(人)
|
O型
|
30.7
% |
37.6
% |
1.2 |
155 |
126 |
A型
|
38.1
% |
29.6
% |
0.8 |
122 |
157 |
B型
|
21.8
% |
18.2
% |
0.8 |
75 |
90 |
AB型
|
9.4
% |
14.6
% |
1.6 |
60 |
39 |
合計
|
100
% |
100
% |
|
412 |
412 |
(項目の並べ方は変更している。また、「期待値」は筆者が付加した)。
●能見氏の考察
「私も、いろんなところの血液型分布を拝見して歩いているが、特別の性格の加わらない集団では、まずまず日本人平均なみの分布率を示すものだ。そんな集団の典型的なものに、学校がある。今までに何校ものぞかせてもらったが、まァ一クラス程度では、ちょっと変わった分布率を見せることもある。だが、百人も越えると、正直なもので、ちゃんと、日本人平均なみの血液型分布に落ちついてしまう。
「この衆議院の代議士さんのように、四百人を超えながら、これだけのパーセンテージのズレを示すものはない」。
「まず、O型が多いのに驚く。AB型も、かなりの伸び率を示している」。「この〔カイ2乗〕検定を行なうと、衆議院の代議士さんの血液型分布のズレは、5パーセントどころではない。危険率
0.1パーセント以下。偶然の入りこむ余地がゼロに近いという、きわめて高い有意性を得るのだ」。
「O型は、その政治好きが日常でも目立つし、仲間作りは熱心で、権力への関心は、肯定的否定的を問わず、一番高い。またAB型の社会人は、人間関係のパイプ役を得意とする人が、じつに多い。そして、政治は人間関係の世界である。」
★氏の指摘どおりである。データの不明者数が書かれていないのは残念だが、結果に実質的影響は少ないと思われる。
カイ2乗検定では、危険率 0.0003%で、有意差がある。(『世界大百科事典』の平均分布率では、0.00008%)。
O型の多さを、二項分布によって調べると、155人以上となる危険率は
0.2%である。(『世界大百科事典』の平均分布率では、0.01%)。
AB型衆議院議員の多さを、二項分布を用いて調べると、60人以上となる危険率は
0.05%である。(『世界大百科事典』の平均分布率では、0.2%)。
氏は、「この調査をさらに掘り下げるため、似た分野で、職業気質が違っていそうな職種」、すなわち、都道府県知事の血液型分布率と比較する。
<都道府県知事の血液型分布>
(1976.11現在、5知事が欠落)
血液型
|
日本人平均分布率(%)
|
知事数(%)
|
知事数(人)
|
期待値(人)
|
O型
|
30.7
% |
28.6
% |
12 |
13 |
A型
|
38.1
% |
52.4
% |
22 |
16 |
B型
|
21.8
% |
16.7
% |
7 |
9 |
AB型
|
9.4
% |
2.4
% |
1 |
4 |
合計
|
100
% |
100
% |
42 |
42 |
(項目の並べ方は変更している。また、「期待値」は筆者が付加した。)
●能見氏の考察
「代議士と比べて、対照的といっていい違い方は、驚きの一語である。代議士で少なかったA型が50パーセントを越えている。……代議士では伸び率最高だったAB型が、なんと、京都府の蜷川虎三知事一人なのだ」。
「これだけの大きな違いを示すということは、代議士と知事に要求される機能の違いに、敏感に気質が反応したことに、ほかならない。……知事には、より緻密な行政能力と、自治体首長としての指導性と責任が加わって来る。……緻密な行政能力は、A型気質と強く結びついている。また、AB型には、責任の集中をきらい、ワンマンとなるのを好まず、調和と強調を求める傾向が強い。それが、大きな組織の長を目ざすことを、ためらわせているといえる」。
★データ数は 42で、都道府県知事は合計 47人いるので、1割強にあたる5名の欠落があることになる。しかし、それが実質的影響を与えないものとして、分析をすすめよう。
(i)
まず、都道府県知事の血液型分布をそれだけでみてみる。
カイ2乗検定結果は、危険率 17%となり、血液型による有意差があるとは、全体的にはいえない。(『世界大百科事典』の平均分布率では、18%)。
A型知事の多さを、二項分布を用いて調べると、22人以上となる危険率は
4.2%で、有意差が認められる。(有意水準 10%で、両側検定、片側5%ずつ)。しかし、『世界大百科事典』の平均分布率
39%で計算すれば、危険率は 5.4%となり、有意差が認められないことになる。
微妙な結果であるが、もともと有意水準を 10%と甘くしていてこれなので、上記データからはA型知事の多さを積極的に主張しない方が、いいと思われる。
AB型知事の少なさを、二項分布を用いて調べると、1人以下となる危険率は
8.5%で、有意差はない。(『世界大百科事典』の平均分布率でも、6.8%)。
したがって、都道府県知事の血液型分布が、日本人平均と比べて特異だということは、上記のデータからはいえない。
(ii)
都道府県知事と衆議院議員の血液型分布を、対比してみる。下の表1から表2を算出する。
<衆議院議員と都道府県知事の血液型分布の対比>
(表1 実際の人数)
実測値
|
O型 |
A型 |
B型 |
AB型 |
合計 |
衆議院議員(人) |
155 |
122 |
75 |
60 |
412 |
知事(人) |
12 |
22 |
7 |
1 |
42 |
合計 |
167 |
144 |
82 |
61 |
454 |
(表2 期待値)
期待値 |
O型 |
A型 |
B型 |
AB型 |
合計 |
衆議院議(人) |
151.6 |
130.7 |
74.4 |
55.4 |
412 |
知事(人) |
15.4 |
13.3 |
7.6 |
5.6 |
42 |
分割表による一様性の検定を行なうと、危険率
1.0%で有意差がある。したがって、「代議士と知事に要求される機能の違いに、敏感に気質が反応した」という能見氏の考察は、妥当と思われる。
次に、(表1 実際の人数)と(表2
期待度数)より、調整化残差を求めてみよう。
(表3 調整化残差)
|
O型
|
A型
|
B型
|
AB型
|
衆議院議員
|
1.2
|
-3.0
|
0.2
|
2.2
|
知事
|
-1.2
|
3.0
|
-0.2
|
-2.2
|
★絶対値が 1.64より大きい項目は、A型とAB型にみられる(危険率
10%)。両職種の機能の違いには、A型とAB型が反応したようである。
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