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4.『血液型活用学』(1976年)から

(1) 歌手、司会者、オーケストラ・メンバーの血液型分布(102−105ページ)

●能見氏の考察
 氏は、「血液型と性格の関係を数字化する主な方法」の一つとして、
(2)  特殊な分野での血液型分布率を求め、平均的分布率とのズレから特異性を見出す。」
ことを挙げている。そして、
 「『血液型愛情学』の中で発表した、NHK紅白歌合戦の第一回以来の全出場歌手の血液型調査も、この(2)の一例である。百六十人の歌手の名の血液型別リストは、同書にゆずり、分布率だけを再録したのが…〔以下の〕表である」。
 「これは統計対象の母集団が単に歌手というだけではなく、現在では最も権威ありとされる基準によって“一流”人気歌手という枠づけがされている点、資料的にも価値が高い」。
★「枠づけ」を、紅白出場歌手にした能見氏の着眼はすばらしい。統計調査の成否の過半は、明確で意味のある枠付けの決定、あるいは無作為抽出法であれば、ランダム性の確保の
仕方にかかるといえよう。むろん、ここで“一流”というのは、ショービジネスの成功者としてである。
 ただ、今回に限ったことではないが、血液型不明者が何名なのか表記されていないのは、推定の精度に影響するだけに残念。実質的影響はないと、信じるほかはない。
 以下の表では、原文にはあった男女別の人数・パーセントは省略して、男女を合計した
出場者数のみを掲載した。なお、日本人平均分布率」は、能見氏の使用している数字である。「期待値(人)」は、出場者数合計 163に各血液型の日本人平均分布率を乗じて、筆者がだした。

<NHK紅白歌合戦第1回(1951年)〜26回(1975年)出場歌手血液型分布

血液型

日本人平均分布率(%)

出場者数(%)

出場者数(人)

期待値(人)

O型

30.7 %

37.4 %

61

50

A型

38.1 %

29.4 %

48

62

B型

21.8 %

17.2 %

28

36

AB型

9.4 %

16.0 % 

26

15

合計

100 %

100 %

163

163


●能見氏の考察
 「この〔紅白出場者数〕と、日本人の血液型平均分布率とのズレが、偶然の程度を越えているかを調べるのが、統計学の有意差検定である。その中でカイ自乗検定という方法で、危険率p値という有意の程度を示す数字を算出すると、0.5パーセントという数値を得る。統計学では、危険率5パーセント以下が有意とされるから、これは極めて高い有意性、つまり、血液型と歌手という職業性の大きな関連性の実証を示している」。
★氏の結論には同意できるものの、筆者がカイ2乗検定結果を行なうと、危険率は 0.22%となった。四捨五入の仕方をいろいろ変えても、0.2%前後だと思われる。

 なお、各血液型の日本人平均分布率は、文献によって多少異なっている。上掲表に示されているものは、能見氏が使用していたものである。他方、平凡社『世界大百科事典』(CD版、日立デジタル平凡社)では下の表のようになる。
 カイ2乗検定の危険率は 0.16%という低率である。

血液型

日本人平均分布率(%)

出場者数(%)

出場者数(人)

期待値(人)

O型

29 %

37.4 %

61

47

A型

39 %

29.4 %

48

64

B型

22 %

17.2 %

28

36

AB型

10 %

16.0 %

26

16

合計

100 %

100 %

163

163

●能見氏の考察
 「歌手は自分の個性をいっぱいに表現する職業」だが、紅白出場の「"一流"人気歌手」にO型が多いことから、「O型は自己主張、個性表現の強い傾向」がある。
 「B型は自己表現の才能は目立たないが……」
 「AB型は適度な自己表現と、他人に調和させる性向を併せ持つ」。
★O型の出場者の多さを、二項分布を用いて調べると、61人以上となる危険率、すなわち、「1−(60人以下となる危険率)」は 1.3%である。
 B型の出場者の少なさを、二項分布を用いて調べると、28人以下となる危険率は 7.9%で、有意差はない。(有意水準 10%で、両側検定、片側5%ずつ。)
 AB型の出場者の多さを、二項分布を用いて調べると、26人以上となる危険率、すなわち、「1−(25人以下となる危険率)」は 1.2%である。
 能見氏のB型に対する表は、少しいさみ足と思えるが、他は妥当であろう。

TV一流司会者の血液型分布(1974年)>

 「歌手は自分の個性を一ぱいに表現する職業、司会者は、ときに自分の個性を押え、人を立てる意味で、歌手とは対照的な面を持つ職種である。……名簿は前著〔『血液型愛情学』〕にゆずり、分布率の数字だけを示したのが」下の表だとのことである。
 なお、「期待値(人)」は、司会者合計 80に各血液型の日本人平均分布率を乗じて算出し、日本人平均分布率」とともに筆者が付け加えたものである。

血液型

日本人平均分布率(%)

司会者数(%)

司会者数(人)

期待値(人)

O型

29 %

18.8 %

15

23

A型

39 %

31.3 %

25

31

B型

22 %

35.0 %

28

18

AB型

10 %

15.0 %

12

8

合計

100 %

100.1 %

80

80

●能見氏の考察
 B型の司会者が多いことから、「B型は……多様の興味関心能力と、変化に即応するアドリブ性が大きい」。
 「AB型は……他人に調和させる性向を併せ持つ」。
★実際の司会者数と、血液型の平均分布率から算出した期待値(人)で、カイ2乗検定をすると、危険率 0.6%で、血液型による有意差がある。
 B型多さを、二項分布を用いて調べると、28人以上となる危険率、すなわち、「1−(27人以下となる危険率)」は 0.5%と、たいへん小さい。
 AB型の司会者の多さを、二項分布を用いて調べてみると、司会者が 12人以上となる危険率、すなわち、「1−(11人以下となる危険率)」は 10%で、有意差はない。(有意水準 10%で、両側検定、片側5%ずつ。AB型の日本人平均分布率を 9.4%としても、 7%となリ、有意差はない)。したがって、AB型の司会者が多いことと血液型気質との関係は、この調査からはいえない。
 パーセントの数字で見れば、AB型は平均分布率よりも 1.5倍も多くい、また 12人も調べているのだから、有意差があるかのように思ってしまう。しかし実は、12人しか調べられなかったために、データ数の不足から有意差が消えている。
 ちなみに、O型司会者の少なさを、二項分布によって調べると、15人以下となる危険率は 2.5%で、有意差がある。
 なお、「(紅白出場)歌手と司会者の血液型分布率を見比べると、O型とB型で特に呆れるばかりの差を見せる。この両職種の間の差について、カイ自乗検定をこころみても……計算結果は、これ(0.1%)をはるかに下回るのだ」というのは、氏がどのような計算をしたのか理解できなかった。

(司会者の血液型分布については、『新・血液型人間学』(1978年)の 44ページにおいて、データ数を増やして再び取りあげられている。結論は同じようなものとなっている)。

 「こうした芸能分野と関連したものでは、最近、NHKの制作陣の協力を得て、東京交響楽団と日本フィルハーモニー交響楽団の全員の血液型の調査がある。結果が」下の表となっている。
 ただし、楽器別の人数は割愛させていただき、「日本人平均分布率」と「期待値」は筆者が付加したものである。

<東響と日フィルの全楽団員の血液型分布

血液型

日本人平均分布率(%)

奏者数(%)

奏者数(人)

期待値(人)

O型

29 %

23.8 %

30

37

A型

39 %

45.2 %

57

49

B型

22 %

20.6 %

26

28

AB型

10 %

10.3 %

13

13

合 計

100 %

99.9 %

126

126

●能見氏の考察
 オーケストラ・メンバーにA型が多いことから、「A型は社会の中では、多数の中のチームワークによる作業に適性を示す」。
★カイ2乗検定を行なうと、危険率の p値は 47%になり、血液型による有意差があるとは、全体的にはいえない。
 A型の奏者の多さを、二項分布を用いて調べてみると、奏者が 57人以上となる危険率、すなわち、「1−(56人以下となる危険率)」は 9.0%で、有意差はない。(有意水準 10%で、両側検定、片側5%ずつ。A型の日本人平均分布率を 38.1%としても、6.1%で有意差はない)。
 オーケストラ・メンバーにA型が多いという判断は、下せないようである。

(目次)  


(2) 運動選手の血液型分布(105−110ページ)

 「複雑な条件のからむ社会行動に比べ、スポーツ分野は、なまに体をブツけて行く一種の極限状況で、体質気質がモロにはじけ出る場所」だとの予想のもとに、「マラソン、跳躍、投てきの三分野の一流選手の血液型分布を、能見氏は集計した。
 「一流という基準は年間や歴代の三十傑表、全日本やオリンピックの出場経験や成績を考えて暫定している。……専門分野の方々にも納得していただける一流という基準で、母集団は構成されているはずである」。〔「母集団」は、「標本」の誤りだと思われる。〕
 言うまでもなく、「分野別の分布率を見るとき、数の少ない血液型を、性急に適性なしと断定することは戒めねばならぬ。それに反する例は、いくらも出てくる。……パーセンテージと個々のケースとは別々に考える必要がある」。「その分野で、血液型に応じて、どうすれば自分の気質体質を充分に生かすことができるかという参考とすべきであろうと思う。それは、コーチングの場合も特に重要である」。

一流マラソン選手血液型分布

血液型

日本人平均分布率(%)

選手数(%)

〔%での〕倍率

選手数(人)

期待値(人)

O型

30.7 %

22.8 %

0.74

18

23

A型

38.1 %

44.3 %

1.16

35

31

B型

21.8 %

19.0 %

0.87

15

17

AB型

9.4 %

13.9 %

1.48

11

8

合計

100 %

100 %

 

79

79

  (「期待値」は筆者が付加した。)

●能見氏の考察
 「マラソンではA型が多く、O型が極めて少なく、AB型が多い」。
★氏のこの判断は、一流マラソン選手に占める各血液型の割合(%)と、日本人平均分布率(%)を比べて出したものである。
 例えば、O型は18人で、
全一流マラソン選手 79人の 22.8%である。一方、O型の日本人平均分布率は 30.7%(氏が採用した数字)であるから、倍率は 22.8 ÷ 30.7=0.74 となり、「極めて少な」い、云々。
 しかし、今回のようにデータ数が2桁台で少ないときは、最初の見当づけとしても誤差が大きくなりすぎるし、また推計学的には意味をなさない方法である。というか、若葉マークのドライバーが、わけの分からぬまま右折してしまい、直進車と事故を起こしてしまったようなものであろう。下記で検証するように、
マラソン選手のデータからは、積極的なことは言えないのである。
 カイ2乗検定では、危険率 22%となり、血液型による有意差があるとは、全体的にはいえない。(『世界大百科事典』の日本人平均分布率では、危険率 37%)。
 A型のマラソン選手の多さを、二項分布を用いて調べると、35人以上となる危険率は 15.4%である。(『世界大百科事典』の平均分布率では、19.7%となる)。したがって、A型のマラソン選手が多いことは血液型と関係があるとは、言えない。
 O型のマラソン選手の少なさを、二項分布を用いて調べると、18人以下となる危険率は 7.8%で、有意差はない。(『世界大百科事典』の平均分布率では、13.6%となり、有意差はない。有意水準 10%で、両側検定、片側5%ずつ)。
 AB型のマラソン選手の多さを、二項分布を用いて調べると、11人以上となる危険率は 12.1%で、有意差はない。(『世界大百科事典』の平均分布率では、16.3%である)。

一流跳躍選手血液型分布

血液型

日本人平均分布率(%)

選手数(%)

〔%での〕倍率

選手数(人)

期待値(人)

O型

30.7 %

39.8 %

1.30

53

41

A型

38.1 %

21.8 %

0.57

29

51

B型

21.8 %

27.8 %

1.28

37

29

AB型

9.4 %

10.6 %

1.12

14

13

合計

100 %

100 %

 

133

133

  (「期待値」は筆者が付加した。)

●能見氏の考察
 跳躍では「O型が著しく多く、・・・A型が驚くほど少ない」。
 「O型を一発勝負師的と指摘してきたが・・・一瞬の集中力にかける跳躍競技に多く集まるのも観察分析と一致する」。
★以上の能見氏の考察は、妥当と思える。
 選手数(人)と期待値(期待度数)でカイ2乗検定をすると、危険率 0.16%で、血液型による有意差がある。(『世界大百科事典』の平均分布率では、0.05%)。
 O型の跳躍選手の多さを、二項分布を用いて調べると、53人以上となる危険率は 1.6%である。(『世界大百科事典』の平均分布率では、0.5%)。
 A型の跳躍選手の少なさを、二項分布によって調べると、29人以下となる確率は 0.004%である。(『世界大百科事典』の平均分布率では、0.002%)。

一流投てき選手血液型分布

血液型

日本人平均分布率(%)

選手数(%)

〔%での〕倍率

選手数(人)

期待値(人)

O型

30.7 %

31.2 %

1.02

39

38

A型

38.1 %

31.2 %

0.82

39

48

B型

21.8 %

31.2 %

1.43

39

27

AB型

9.4 %

6.4 %

0.68

8

12

合計

100 %

100 %

 

125

125

  (「期待値」は筆者が付加した。)

●能見氏の考察
 「投てきとなると、B型がめったに見ないほど大きなパーセンテージを示している」が、これは、「解釈に苦しむものの一つだ。……強いて理由をあげれば、投てきは、練習で最も孤独の作業の感がある。……黙々と投げては黙々と記録を測る。そうした一人遊び は、B型が一番強いのだ。さらに記録的なものに関心を寄せるのも、B型なのは、日常生活でも目立っている。一人だけでこり性ぶりを示すB型性が、この投てき分野で密度を濃くしているとも、考えられる」。
★以上の能見氏の考察は、妥当と思える。
 カイ2乗検定結果は、危険率 4.95%で、有意性を示した。(『世界大百科事典』の平均分布率では、3.5%)。
 B型の投てき選手の多さを、二項分布を用いて調べると、39人以上となる危険率は 0.9%である。(『世界大百科事典』の平均分布率では、1.1%)。

●能見氏からの注意
 「なお、血液型と性格の関係を、市販されている性格テスト類でチェックしては……という提案を時たま受ける。これは考え方がサカサマであることを申しあげておこう。血液型は、生物体に本来備わった体質気質の分類基準。そのチェックは・・・統計的方法で成される。市販の性格テストは、そのような絶対的基準はなく、観念的に仮定された性格パターンを基にし、何人かの人々にテストを試み、その平均値を標準値として採用したものに過ぎない。チェックの基準の客観性、科学性はないのである。これらのテストの妥当性、信頼性のほうが、逆に血液型のように、実証された気質体質の分類基準によってチェックされるべきものなのだ」。


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