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方領土返還とロシア世論


目 次


1.出したメールの内容

2.なぜメールを関係諸機関に出したのかといえば 


1. 出したメールの内容


 北方領土返還に向けての日夜のご努力、ご苦労様です。

 ところで、沖縄がアメリカの51番目の州とはなっていなかったのに比べ、北方領土は現在ロシアの領土なのですから(ロシア側から見れば)、ロシア国内の世論喚起を返還運動に加える必要があると思います。と言いますのは、

1. 民主主義国であれば(現在のロシアはそうです)、領土を他国に譲るかどうかは、理論的には、主権者である国民の判断によることになります。

2. 感情的側面から考えても、例えば石垣島や宮古島が日本の領土でなくなることになれば、日ごろ政治には無関心で、両島のことなど考えたことのない私でも、「えっ」と思うことでしょう。いくら小さいといっても、領土を失うということは、国民全体の感情を深く刺激する問題です。
 仮に上層部の政治家の了解を得られ、北方領土が返還されたとしても、ロシア国民の理解を欠くときには、「私たちが経済的に困っている時をねらって、札束で政治家の顔をひっぱたいて領土を取っていった」との感情が、ロシア国民に残るのではないでしょうか。 

3. ロシアの政治家たちにしても、選挙で選ばれる以上、ロシア国民の半数以上が、返還承認か無関心というのでなければ、返還にはなかなか応じられないと思います。そして、現在のロシア国民の大多数、というよりほぼ全員が、北方領土について問われれば「当然、ロシアの領土だ」と答えることでしょう。

 そこで、提案いたしたいのですが、

1. ロシアの新聞に、意見広告をだしてみてはどうでしょうか。もちろん、ロシアの政策を避難し、国民を説得するといった調子ではなく、「やあ、今日は。実は私たち少し困っているんです」的なソフトな訴えです。その反響をみながら、次の対応なり政策を考えていくということではないでしょうか。詳しい情報や主張は、次の2の「ホームページを見てください」ということになります。

2. ロシア語版と英語版のホームページを作成します。

3. ロシアの多くのジャーナリズムやアカデミズム関係者にメールを送り、ホームページを見てくれるようお願いします。彼らから質問がきたときには、迅速な解答をします。

 ソ連からロシアへと変わったことにより、返還問題の中心はロシア世論の動向になったと思われます。 


2.なぜメールを関係諸機関に出したのかといえば


 北方領土問題については、私は今まで残念ながら無関心でした。したがって、返還の条件はどうあるべきかといった、具体的内容を考えたことはありません。そればかりか、返還の現実的可能性についても、私にはまだよく分かっていません。
 つまり、長谷川慶太郎氏などが指摘するように、第二次大戦直後の例えばヨーロッパでは、国境がパワーポリティックスによって大きく変えられましたが、その後では、国境の変更が行われたことはありません(国境ごと他国と合併するとか、分裂するとかはあっても)。それは、国境について双方が歴史的・民族的正当性をもちだすと、泥沼の争いに陥るということが広く認識されているためだと、氏は言います。
 そして、沖縄返還後の冷戦期でさえ、日本はアメリカから北方領土返還要求への支持を取りつけることはできなかったという事実があります。現在、アジア諸国のうちで、日本の要求は正当であると、支持してくれている国はあるのでしょうか。
 また、もし返還されたとしても、再開発・復興には莫大な予算が必要で、それよりは旧島民の方には十分な条件のもと、現国内で生活していただく方がよくはないか、との説もあります(大前研一氏)。

 しかし、私が北方領土返還運動のホームページ:
◎ 根室市の北方領土問題対策協会
 http://www.hoppou.go.jp/seisyounen/top.html
◎ 北海道総務部北方領土対策本部
 http://www.pref.hokkaido.jp/soumu/sm-hrtsk/hp/index.htm
◎ 総務庁北方対策本部
 http://www.somucho.go.jp/hoppo/hoppo_f.htm
この3つを見て思ったのは、返還運動を行うという立場に立つにせよ、運動が働きかける対象の選択が不適切、あるいは少なくとも不十分なのではないかということです。

 十年前のソ連時代であれば、返還を行う主体はソ連共産党の幹部ですから、幹部政治家をターゲットにすえるのは当然ですし、またそれ以外の方法はありえなかったでしょう。しかし、ロシア時代になってからは、ターゲットをまずロシア国民や、彼らの世論形成に大きな影響を与えるロシアのジャーナリズム・アカデミズムにすべきではないでしょうか。

 北方領土問題対策協会が作っている年表
(http://www.hoppou.go.jp/nenpyou/frameset.html 1996年までしか掲載されていませんが)によれば、ソ連共産党が解体した1991年8月(ロシア連邦は12月成立)以来の返還運動として、次のようなことが行われてきています(順不同)。

1. 国内と北方領土現地との、親善の向上。(双方からのビザ無し訪問、姉妹都市提携など) 
2. 北方領土返還の国内啓発イベント。(根室市内の北方少年少女や北方領土返還要求のキャラバン隊を、国内各地へ派遣。返還要求署名運動6千万人達成。少年弁論大会。学習会やフォーラム。元島民の手記刊行。市民のつどいや国民大会。教育指導者研修会。返還祈願望郷ラインサイクリングなど)。
3. 国内の関係政治家・官僚の視察。
4. 北方領土現地への人道支援。(小学校の建設、地震救援など)。

 つまり、一言で言えば、返還運動のターゲットは日本国内世論の高揚に向けられています。北方領土問題対策協会が、いみじくも述べられているとおりです。
 「ロシアとの交渉において、もっとも大きな力となるのは、北方の島々を故郷(ふるさと)とする人達や関係のある人達の、ふだんからの運動の積(つ)み重(かさ)ねと、国民の一致した世論です」。

 ロシア関係の記述(現地関係のものは除く)は少ないようです。
5. ロシア関係者の視察。
  1993.9 ブルブリス国際戦略センター所長が、納沙布岬を視察。
  1995.7 イズベスチャ紙の論説委員が、北方領土問題取材のため来根室。
  1995.9ロシア連邦院国際問題委員会一行(7名)が来根室、北方領土 を視察。
  1996.7 ロシア大使が北方領土を視察(33年ぶりの来根室)。

 他方では、従来からの、あるいは新たな問題が生じています。
1. ロシア国境警備隊による漁船のだ捕、銃撃による負傷。
2. 北方領土への韓国やドイツの工場建設に、日本は反対。

 もちろん、これまで運動を続けられてきた方々の(特に民間の)ご努力には敬意を払い、尊重せねばならないことは言うまでもないことです。それを前提にした上で、愚考しますと、日米安保条約の是非などの問題とは違い、北方領土返還が望ましいことについては、一応世論の一致があると思います。
(むろん、前掲の長谷川氏や大前氏などの指摘には、大衆運動的にではなく、論理的に答えなければなりませんが)。

 したがって返還運動は、何よりも返還する当事者であるロシア国民へと向かう必要があると思います。そこで、前掲のメールを、
◎ 根室市北方領土問題対策協会 hok_tok@hoppou.go.jp
◎ 北海道総務部北方領土対策本部 ryodo.kikakuc@pref.hokkaido.jp
◎ 総務庁 webmaster@somucho.go.jp
宛てに、2000年6月19日に送りました。ご返事があったときには、ここに併載すべきだとは思いますが、まだ三者からはご連絡がありません。

(2000. 06. 23) 


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