朝鮮問題


目 次

1. 北朝鮮問題への提言

2. 1への補足説明

3. 「拉致された日本人」の帰国問題と日本政府の責任


1. 北朝鮮問題への提言


 付記. 現在の状況にあわせてこの提言を、改訂しました。(2001/12/25) → 改訂版


 最近の北朝鮮に関するさまざまな報道によると、飢饉が相当進行しているようです。1年以内にも大災害が予想されます。さまざまなシナリオが、関係諸国や関係者によって作られていると思われます。
 以下の拙案は、何よりも困窮する北朝鮮国民を早く救済することを前提にしています。おそらく北朝鮮政府、韓国、中国、米国、日本などの各関係者の理想とするところとは違うでしょうが、現実的利益は守られていると思われます。

(1) 現北朝鮮政権は、政権を移譲する。現政権の主要関係者は、資産を保全されて(海外財産も含む)、たとえば中国へ出国する。

(2) その場合、中国政府は、現政権関係者を保護する。同時に、中国政府の後援のもと、北朝鮮後継政権が樹立される。

(3) 鴨緑江を中国人民解放軍がわたるときには、大量の食料・医薬品などの援助物質を携える。

(4) 韓国、米国、日本は、北朝鮮後継政権とは38度線で今までどおり接する。さまざまな援助をすると同時に、後継政権に政治犯の釈放、拉致された日本人問題の解決などを約束させる。

 各関係者にシナリオの一つとして、一考していただければと思います。

(1997/07/09) 


2. 補足説明


 上記の拙案に対し、「この程度の提案」は価値がないとの感想が、電子メールで寄せられました。そこで、提案の補足説明をします。

(a) 北朝鮮の現在の状況については、雑誌などでも盛んにとり上げられていますが、管見にふれた範囲では、拙案のような提案はまだ行われていません。(既にありましたらご一報下さい)。したがって、提議することに意味があるかもしれません。
(b) 現北朝鮮政権が、少なくともこれから10年は安定して存続すると確信が持てるのであれば、確かに拙案は意味を持ちません。たとえば、北朝鮮の高官がそのような確信を持っているとき、わざわざ政権を渡して亡命しようとは思わないでしょう。逆に、政権が早急に崩壊すると決まれば、また意味が無いでしょう。たとえば、西側がそのように予想するとき、現北朝鮮政権にいわば餞別を渡して、殿様生活を送らせようとはしないでしょう。
 しかし、雑誌などで専門家の予想をみても、3年以内に崩壊するかどうかの予想は半々といったところです。これから以後、ますます分からなくなる可能性もあります。そして、崩壊するにしても、また存続するにしても多くの人たちの苦しみが続くことを考えると、拙案も一考に価するはずです。
(c) 一般の人はまだ知らないし、また知らせるわけにもいかないが、拙案のような方策がすでに関係者の間では検討されており、その工作(たとえば、北朝鮮政権への説得など)も行われているのだ、ということでしたら、拙案は意味がありません。しかし、その可能性は、たぶん無いでしょう。 

 つまり、明確な予測が出来る、あるいは災害を終わらせる方策があるならば別ですが、そうでなければ拙案はシナリオの一つになり得るはずです。(1997/08/11) 


3.「拉致された日本人」の帰国問題と日本政府の責任

 
 電子メールで「拉致された日本人たちは日本へ戻ることは出来るのでしょうか?」という質問が寄せられました。私の予想、ならびに日本政府への批判を書きます。

 「拉致された日本人たち」は、現在の北朝鮮政権のもとでは、いかなる形にせよ帰国はまず無理だと思います。 しかしあえて可能性をさぐれば、現北朝鮮政権と日本政府が非公式に合意し、日本の大手マスコミや関係者にも事情を納得させて、事件とはならない形で帰国させ、その後ひっそりとした生活を送ってもらうという最後の手段は残されています。帰国者は、日本での通常の社会生活に戻りはしても、公式の記者会見や抗議活動はしないわけです。
 このような手段に訴えることは、人道的見地からは検討の余地があります。大使館人質事件などとは違い、非公式の取引をしても、今後拉致事件の再発を起こす事情にはないからです。現状のままですと、「拉致された」方々は、今後少なくとも1年以上、言語を絶する体験を続けることになります。いつ終わるとも知れないそのような生活の中で、死亡される方も出るかもしれません。 
 1での拙案のように、中国のバックアップする政権が北朝鮮に誕生するならば、帰国は可能になるでしょう。しかしその際も、帰国者が拉致されたときの事情などを、公式に語ることは禁じられたままだと思われます(少なくとも当座の間は)。

 この「拉致事件」で残念なのは、当事者とされている北朝鮮政府をおくとき、事件が起きてから曖昧なままにしてきた日本国政府、首相たちの対応です。言うまでもなく国家は、国民の生命、人権、財産などを守るためにあります。それが非道な形で侵された可能性があれば、当然、事実関係の徹底的調査をすることを宣言し、関係者(国)に協力を求めるべきでしょう。協力が得られず、また妨害があるときは抗議し、国連へなり提訴すべきです。調査結果は公表し、不十分な結果に終わったときには、誰それ(あるいは何国)の対応がこうこうだったので、ここまでしかわからなかったと、明らかにしなければなりません。
 そして、やるべきことはやったが万策尽きた、後は武力行使ぐらいしか残されていないが、それはできない。しかし、人道的見地からぜひ短期的解決をはかりたいというのであれば、裏取り引きもやむなしということになります。
 諸外国での日本大使館の予算の半分は、天皇誕生日のパーティに使われており(パーティをするのなら、憲法記念日というのが筋だと思いますが)、それを成功させることが大使の大きな仕事だ、という週刊誌の記事を読みました。あきれるというより、そうなんだろうなあと、私は納得してしまったのですが、それが今の日本外交のイメージだといえます。

 ところで、北朝鮮の政権党を友党としてきた日本の政党もあったはずです。その人たちはこの事件に関して、「友党」に激しく注文をつけたのでしょうか。注文が聞き入れられないときは、絶交を宣言するくらいのことはして欲しい。それが良心というものでしょう。「内政干渉はしない」といった次元の問題ではないはずです。

(1997. 11. 15 記、2000. 09. 08 修正


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