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是れ地上の霜かと  (V. 1.1)



 高校で漢文の時間に李白の「静夜思」を習ったが、なかなかいい詩だなと思った。語句が分かりやすいので、高校生にもいくらかは鑑賞できたのだろう。
 感動の中心は当然、「頭を挙げて山月を望み、頭をたれて故郷を思う」であった。しかし高校生の私には、「牀前月光を看る」は舞台設定でいいとしても、「疑うらくは是れ地上の霜かと」の句が、ピンとこないというか、あまり効果を上げていないような気がしたのだった。

 それから多少の人生経験を経て、あの地味だと思った「地上の霜かと」の語句が、心にしみてきた。夜闇の底を、夾雑物のない、白く穏やかなものがおおっている――それによって詩の世界が深まっていることに、気づいたせいである。
 最近は夜、庭さきがすこし明るくなっていると、この語句を思い出すことが多い。両親を亡くす年齢になったせいであろうか。

(初出 2012.3.13)


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