HOME


レーベルによる位相の違いへの提言 v. 2.0.


目 次

1. 結論から記せば

2. 位相の正相と逆相とは  

3. 反対の相での再生の問題点

4. レーベルごとの位相一覧表


1. 結論から記せば

 CDなどの音楽レコードの録音は、制作会社のレーベル(ソニー、ビクター、EMI、ドイツグラモフォンなど)によって正相と逆相とに分かれています。そこで私たちの側でも、それと同じ相で再生しないと、音楽鑑賞に支障がでます(特に、スピーカーから近距離で聴く場合や、スピーカーが同軸タイプの場合はそうだと言われます)。演奏者の表現(情感や意志)が、聴取しづらくなるのです。(*1)
 そこで、以下のことを提言したいとおもいます。
a) ラジカセやいわゆるミニコンポは別にして、例えば5万円以上のアンプには、使用しやすい位相切替の機能を付ける。(*2)
b) CDなどの音楽媒体(*3)の製作者は、どの位相で録音したものかを、パッケージなどに明記する。
c) 将来的には、CDなどの音楽媒体には位相識別信号を記録し、それを受け取ったプレーヤーないしアンプが、自動で位相切替を行うシステムにする。

2. 位相の正相と逆相とは

 位相が反対になるとどういう音がするのか、これを簡単に知るには、スピーカーとアンプとを接続しているスピーカーケーブルの接続を、反対にしてやります。つまり、1本のスピーカーケーブルの先端は、ふつう赤と黒の2つに別れており、それぞれスピーカの赤と黒の2つの端子に「赤は赤と、黒は黒と」接続されていますが、それを反対にして、「赤は黒と」接続します。
 これを、右と左の両スピーカーで行います(*4)。すると、いままで左右のチャンネルが正相(逆相)だったものは、左右とも逆相(正相)になります。また、この位相の反転は、スピーカーケーブルとアンプの端子との接続を、反対にしてもできます(*5)。(なお、接続を変えるときには、アンプの電源は切っておいてください)。
 そして、CD(LP)の愛聴盤をとりだして、聴いてみてください。これまでとは違って聞こえると思います(*6)

 ところでオーディオ関係だけでも、「位相」という用語はさまざまな意味に使われていますが、ここで問題にしている「位相」とは、音楽信号(音声信号とも)は交流の電気信号ですので、プラス側とマイナス側が交互にあらわれますが、その進行位置のことです。しかし、相互の位置がずれる事ではなく、位置が反転関係にあること(正相−逆相)が、問題です。
 では、音楽の録音時に「正相・逆相」なるものがなぜ生じるのかですが――
プロの録音では、 XLRケーブルというコネクター部分に3本のピン(小さい金属の棒)をもつケーブルが、機器の接続に使用されます(バランス接続といいます)。この3本のピンの接続部(米国キャノン社が開発したので、キャノンコネクターと呼ばれます)において、1番目のピンがアース用(グラウンド)に使われるのは共通していますが、2番と3番のピンのどちらをプラス側(ノン・インバート)にし、マイナス側(インバート)にするのかは、レーベル各社によって異なっているのです。 
 現在の日本では、2番ピンをプラスにしたもの(2番ホットといいます)を標準にしていますので、これを正相と呼んでいます。これに対し3番がプラス側(3番ホット)なのが、逆相です。

3. 反対の相での再生の問題点

 正相で録音されたものを逆相で、また逆相を正相でと、左右のスピーカーとも反対に再生すると、試された方はすでにお分かりとは思いますが、
 a) 音としては:
 一般的には、音が広がり、音像がはっきりしなくなります(といっても、左側にある楽器が右から聞こえるということはなく、やはり左側付近には聞こえます)。
が、たんに「音が広がる」という単純なものではなく、音が引っこんだといいますか、いわく言いがたいのですが、「take3」氏はブログで「自分の後ろからスピーカーに向かって進むように聴こえる」と、表しています。
 氏によれば、「左右の [チャンネルの] いずれかが逆相の場合は・・・音像が横向きになる傾向にあります。正相側から逆相側に音が進む感じです。ところが、左右ともに逆相のケースでは、『正相の場合と同じように聴こえる』という意味の説明が [オーディオ雑誌に] 書かれてあって、ビックリ!」
 ちなみに音自体としては、また、BGMとして聞くと、録音と反対の位相で再生した方が、きれいに聞こえるときがあります。しかし、音につやがなくなったり、つまったような感じになるときもあり、一概にはいえません。

 b) 音楽的表現としては:
 多かれ少なかれ、わけの分からないデフォルメを受けます。たとえば、ブラームスの『クラリネット五重奏曲』(マイアー、カルミナカルテット)は、筆者の装置で聴くと、各楽器の音が入り乱れたような、とっちらかったような感じになります。アリス=紗良・オットの「ワルトシュタイン」の低音はふくれて、高音部を包みこみ、およそベートーベン的ではないです。
 一般的には、録音時と反対の位相で聴いても、あまり感動がおきません。ふつう、演奏に感動しないときには、音楽表現をとおして演奏家に近づき、そのつまらなさの種類や原因を知ろうとしますが、演奏家に近づこうとしても、いわば透明な膜のようなものがあって、遮られてしまう思いです(*7)

4. レーベルごとの位相一覧表(あいうえお順)

 以下に、私見ですがまとめてみました。間違っているときには、お知らせ下さい。なお、各社の離合集散は激しく、また、レーベル名と会社名が違うなど、表記上の問題もあります。しかし、一応、よく知られているものを、記しました。

RCA  
アルヒーフ(ARCHIV)  
Westminster  
EMI  
エイベックス・クラシックス  
ERATO  
オクタビィア・レコード  
カメラータ・トウキョウ  
キング・インターナショナル  
キングレコード  
コロンビア ミュージックエンターテイメント  
CBS/SONY  
SONY  
TEICHIKU RECORDS  
デッカ(DECCA)  
DELOS  
デンオン(DENON)  
ドイツグラモフォン(DEUTSCHE GRAMMOPHON)  
東芝EMI   
ナミ・レコード  
HARMONIA MUNDI  
ビクター(JVC)  
ビクター・エンタテインメント  
フィリップス  
フォンテック  
POLYDOR  
ロンドン(LONDON)  
ワーナークラッシクス  

------------------------------------------
(*1) 私がこのLPやCD録音の位相問題を最初に知ったのは、「試聴記」氏が書かれているブログででした。一読して驚きあきれると同時に、自分は今までLPやCDの多くで何を聞いてきたのか、オーディオ装置の改善・調整に励んでもこれでは――と、腹立だしくなりました。これまで関係者やレコードあるいはオーディオ評論家の方々が、問題にしなかったのが不思議ではあります。

(*2) 一部の高級プレーヤーやアンプには、位相切替ができるものがあります。これはおもに、レーベルによってこまめに切り替えるためではなく、バランス接続での極性調整のためだと思われます。したがって、切替スイッチが機器の背面に付いているものもあり、これではこまめに切り替えるには不便です。位相切替だけを目的とするオーディオ用の器具は、管見では販売されていません。

(*3) デジタルファイルは利用したことがなく、分からないため、ここでは言及していません。

(*4) 1個ないしは3個以上のスピーカーを使用している場合は、筆者には経験がないので、省略します。

(*5) スピーカーの側とアンプの側の両方を、いっぺんに反対にすると――これは元のもくあみですね。赤いケーブルと黒いケーブルの材質に違いはなく、色の違いはたんに両者を区別するためだけですから・・・えっ、そんなことは子供でも知っている? 

(*6) えっ、変わらない?! うぅ〜ん・・・その場合ですが、
a) もし、今お持ちのオーディオ装置の使いこなしなどで、苦労するようなことはされたくないし、今後グレードアップをされる予定もないのでしたら、この位相問題は大したことではないともいえます。
 (つまり、明け透けに言いますと、装置や使いこなしのグレードが低い場合には、位相問題はさしたる影響を及ぼさないわけです。)
b) 電気の音楽信号は、スピーカーユニット(スピーカーのラッパの部分)のピストン運動に変えられ、空気の粗密波となって、私たちに到達します。このとき、スピーカーと聴取者との距離が大きければ、録音とは反対の相で再生しても、影響は小さいとの説もあります。
 とはいえ、筆者の場合は、スピーカーとの距離は2メートル丁度ですが、本文の次の (3) で述べますように、反対の位相で再生しますと大きな悪影響を受けます。距離が3メートル以上でどうなるのかは、残念ながら経験がないので不明です。しかし、平均的な日本のリスナーは、2メートル前後の距離で聴いていると思われますので、この位相問題を一般的に提起することは必要でしょう。
c) 蒸気機関車の音やコオロギの音色を再生した場合と、楽音を再生した場合とでは、影響があるかないかという判断基準ないしは聞きどころは、変わってきます。前者はリアルサウンドという観点からですし、後者では音楽的感興です。拙稿では後者、それもアコースティック楽器の再生を念頭においています。

(*7) 筆者の場合は、結局わけが分からずに、録音マイクの設定の仕方が悪かったのか、あるいは自分のオーディ装置との相性のせいなのか、自分に音楽的理解力がないためなのかと、くよくよすることしばしばでした。

(初出:2011. 2. 11)


ご意見、ご感想をお寄せください。
E-mail: takin*be.to(* を @ に変更して、メールして下さい)